父のアイテム － ローラー・シェーバー

　ぼんくらオヤジの亡父が使っていたもの。いっぱいあったはずなんだけど、今でも覚えてるものって意外に少ない。そんな数少ないアイテムのひとつが手動式の『ローラー・シェーバー』だ。小さなハードケースのチャックを開けると、手のひら大の四角いシェーバーが顔を出す。金属製のコアの表裏にプラスチックの化粧板を施したもので、見かけのわりには重い。ローラー状のカミソリ刃が回転する部分は弾力性のある金属製のメッシュ・カバーで覆われていて、この部分が顔に当たる。メッシュ・カバーを外せばローラー本体もカンタンに着脱できるので、掃除をするときは取り外したローラー表面に刻まれた螺旋状の刃を専用のブラシで掃けばよかった。
　ぼんくら少年は髭は生えていなかったから（笑）本来なら触ることも許されない道具だったんだけど、父親が髭を剃ったあとの掃除を買って出ることで、おおっぴらに道具の分解組み立てをすることができた。親公認で道具をいじり回せることなんてそうはなかったから、この作業を任されているときは大人の仲間に入れてもらったようで、ちょっぴり誇らしかった。
　やがて父は電動シェーバーを使うようになり、中学生になって髭剃りが必要になったぼんくら少年は晴れてローラー・シェーバーのオーナーとなった。でも使ったのは１年ぐらいだったかな。高校生になってからはカミソリを使うようになったので、ローラー・シェーバーは勉強机の引き出しに放り込まれたままとなり、その後は引っ越しを重ねるうちに姿が見えなくなってしまった。たぶん小物の整理をしているときに捨ててしまったんだろう。
　名前はおろか存在自体も忘れて数十年が経った先日、たまたまヤフオクに出品されているローラー・シェーバーに出くわして、先述の記憶が堰を切ったように甦ってきた。それで気付いたんだけど、これってタダの懐古趣味じゃないんだね。ぼんくらオヤジもみんなもよく「懐かしい」って言うけど、これは安っぽいノスタルジーなんかじゃないんだよね。今の自分を支えてくれている大切な根っこを思い出したり気付いたりしたときの気持ちを、ボクらは「懐かしい」という愛おしい言葉で語ってるんじゃないだろうか。ぼんくらオヤジがローラー・シェーバーで思い出し、再確認したのは、今は亡き父との間にあった確かな絆だった。

タグ：ローラー・シェーバー 電動シェーバー 懐古趣味 ノスタルジー 懐かしい

コメント 15

こんにちは。心の奥底に知らないうちに眠ってしまっている
何かがジワジワ出てくると、たまらなく心が柔らかく優しく
なって、涙がこみ上げてきます・・・ね。

by ケセパタちゃん (2009-10-14 16:17) 

＠ケセパタちゃんさん、変化の激しい昭和に育った私達は、変化を受容せざるを得ず、「新しいものはいいものだ」「過去を振り返るのは後ろ向き」という価値観に曝されてこの歳を迎えたんだと思います。でも、そろそろこうした強迫観念から解放されてもいいんじゃないでしょうか。大袈裟かもしれませんが、「過去に目を閉ざす者は未来に対してもやはり盲目となる」というドイツのワイツゼッカー元大統領の言葉は、私達のささやかな思い出にも当てはまるのではないかと思いが、最近では徐々に確信に変わろうとしています。「たまらなく心が柔らかく優しくなって、涙がこみ上げて」くる気持ち、大切にしたいですね^^
by ぼんくらオヤジ (2009-10-14 17:06) 

これは使わなかったですね。髭が濃いために、中学時代から毎日電動シェーバーと丁字シェーバーを併用しています。今では白いものが多く混じるようになりましたが、これからも長～いつきあいになりそうです。
髭を伸ばしてもアーネスト・ヘミングウェイみたいになればいいのですが、道具が和風なのでせいぜい高橋是清でしょうね(笑)

高度成長期に少年期を迎えた我々は、まさに「過去を振り返るのは後ろ向き」という価値観に押しつぶされそうになってましたね。古くてもいいものがいっぱいあるのに・・・。母親が操る足踏みミシンなんて、思い出すだけで「たまらなく心が柔らかく優しくなって、涙がこみ上げて」きます。
　私の基本は「ものを大切に・・・」の精神でした。今でも小学校２年の名前が入った定規や小学校卒業の記念品だったニューマンのシャープペンシルを使ってますし、それが長じてなんでも仕舞い込むのでママさんには「少しはモノを捨てなさい！」と叱られます。捨てるものなんか全くないのに・・なぜ分かってもらえないんだろうか？
by ファジー (2009-10-14 21:16) 

＠ファジーさん、高橋是清ですか、ははは！　髭は難しいですよねぇ、ぼんくらは髭が嫌いなので、ちょっと生えてくると直ぐに剃っちゃいます（笑）

小２の時の定規に小学校の卒業記念品のシャープペンシルですか！　そいつは凄い！！　物を捨てない人は「物が好きだから」そうしてるんだと思われがちですが、実は「物にまつわる思い出」を大事にしてるんですよね。むしろ物を物と割り切ってカンタンに処分できる人ほど物欲が強いんじゃないでしょうか。ぼんくらも「捨てたい思い出はあっても、捨てられる思い出なんて全くない」って思います♪
by ぼんくらオヤジ (2009-10-14 22:38) 

私の父は新しいもの好きで、「電気かみそり」の愛用者でしたので、
このシェーバーの記憶はありません。
でも、ジージー鳴る電動シェーバーで髯をを剃るときの父の顔が
やたら面白かったのを覚えています。・・・う～ん、舌で頬をふくらませて、
つまり、飴玉がほっぺの裏側に隠れているみたいな・・。そうやって、
剃りやすくしていたのですね。

>今の自分を支えてくれている大切な根っこを思い出したり気付いたりしたときの気持ちを、ボクらは「懐かしい」という愛おしい言葉で語ってるんじゃないだろうか。

何てあたたかい気づきなのでしょう。やなぎはっか、パクりたくなってしまいました。
by やなぎはっか (2009-10-14 23:42) 

懐かしいィ～って（－－；…さすがの私もこれには興味なく、父が専用ブラシで掃除してた記憶はありますが、
それがローラー・シェーバーだったのか電動だったのか、それすらも分かりません（＾＾；
by 牛子 (2009-10-15 01:35) 

@やなぎはっかさん、ほっぺたを膨らませたり、顔の皮をあっちこっちに引っ張ったり、ひげ剃りはホントに面倒です。生きてる間はこれを延々と繰り返さなければならないんですね、あ"～～～面倒臭い！

> 何てあたたかい気づき

やなぎはっかさんだから申し上げられますが、もしほんとうにそうなのでしたら、それは与えて頂いた気づきと言葉で、ぼんくらの内からでたものではありません^^　ぼんくらは自分をペンとして用いて頂いたことに感謝しましょう♪　そう気付かせてくださったやなぎはっかさんにも感謝！　したがって著作権フリーなんですから、必要に応じてどんどんパクって頂いて結構なんじゃないでしょうか（笑）
by ぼんくらオヤジ (2009-10-15 01:39) 

＠牛子さん、国産の電動シェーバー第1号は昭和30年(1955)に発売された松下のＭＳ－１０でした。ただ当時で2,450円というベラボーな値段でしたから、一般に普及したのは昭和40年代も半ばを過ぎてからでした。ご記憶の時期にもよりますが、それが1960年代の記憶なら、お父様がよほどの新しい物好きでなければ、手動式のローラー・シェーバーだったと考えたほうが妥当かもしれません♪
by ぼんくらオヤジ (2009-10-15 01:49) 

あ～ん
父は今でも安全Tのヒゲソリだよ～
男にうといから全く分からないでしっ
手当たり次第に愛を告ってたの？
もう～どすこ～い!!θ~∇~)＝θ☆スパパーン爆笑
by みゆきママちゃん (2009-10-15 14:23) 

＠みゆきママさん、どさくさに紛れて「男にうとい」やてぇ？
よー言わはりますなぁ^^;　
手当たり次第に告るのはぼんくら一家の男子の伝統みたいで、
中２の長男はモロそうなんです。だから、みゆきママさんの
感動的なエピソードを読ませたって、言うことは分かりきってるんだな。
一言、「もったいねぇ～！」って言うよ、きっと^^;
by ぼんくらオヤジ (2009-10-15 18:41) 

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