謎の生物『シーモンキー』

　６年生の時のことだ。友達の間で奇妙な生物の話題が飛び交うようになった。当初の話では、その生物は何もないはずの水槽に忽然と現れ、サルのような姿に成長すると飼い主の手のひらに載って挨拶するということだった。
　最初はバカにしていたんだけど、じきにマンガ雑誌でも取り上げられるようになって、この生物が実在し、『シーモンキー』という名前であることが判明する。それ以外は「シーモンキーはプランクトン」なんだって程度の情報しかなく、そもそもプランクトンが何なのかが分からなかったので、プランクトン→プテラノドン→恐竜→怪獣、よってシーモンキーは実在のサルみたいな怪獣といういった“確信”に変わっていった。
　そしてある日、金持ちのボンボンで性悪息子だったクラスメートが、親にこの生物を買ってもらうという“事件”が発生。しかも、その証拠にシーモンキーが入っていたという円筒形の容器を学校に持ってくるに及んで“妄想”は頂点に達する。だって容器には、シーモンキーと思しき奇っ怪な生物のイラストが描かれていたからだ。それは竜とも、タツノオトシゴとも、魚にも見てとれる何ともいえない姿だった。飼い主曰く、
「飼うのはこれからなので分からないけど、説明書には３ヶ月で２センチぐらいまで育つって書いてあった。その頃にはどんな生き物か分かるはず」
　ということだった。当然、みんなも欲しがったんだけど、値段が1,500円と知って超ガッカリ。今の子供たちだって7,000円近いキットを買うとなれば貯金を切り崩さなきゃ無理だろうし、得体の知れない代物にそんだけの出資をするとなったらさすがに引いちゃうだろう。
　一週間ほどして飼い主から、
「容器の中で白い粒のような生物が発生し、泳ぎ回っている」
　という発表があって、ぼんくら少年たちは大いに感動。見せてもらいたかったんだけど、あんまり人目に触れると死んでしまう（笑）ということで、飼い主の手下的存在だった数人だけが目撃し、
「凄く元気に泳ぎ回っていて、人のいるほうに寄ってきた」
　なんてことを得意気にふれて回るのだった。その後も、大きさがボウフラ程度になってきた等の情報がリークされたものの、２～３週間後にはパタリと話が止んでしまった。気になったクラスメートが飼い主を問い詰めたところ、
「孵化して20日目ほどで全滅しちゃった」
　とのこと。飼い主の手のひらで挨拶する姿を拝み見る夢は潰えてしまったのだった。
　やがて600円の簡易キットが世に出て飼育する友達が珍しくなくなるころには、この生物が『アルテミア・サリーナ』というエビの一種（英名は『ブライン・シュリンプ (Brine shrimp)』）であることが判明し、手のひら大の大きさになることもなければ、飼い主にお辞儀をするようなエイリアンでないことも分かり、少年たちの興味はアッという間に薄れてしまった。
　別に詐欺商法だったわけじゃなく、情報がカンタンに手に入らない時代に生きた子供たちが勝手に妄想を膨らましただけの話なんだけど、この微細なプランクトンが少年時代の一時期を鮮やかに彩ってくれたことだけは確かだ。シーモンキーを巡るエピソードは、ボクらが想像力で楽しむことができたことの証でもある。

■シーモンキー飼育キットのＣＭ 1988年（こんなＣＭ知らなかった^^;)■

■これがシーモンキーだ！■

タグ：シーモンキー アルテミア ブラインシュリンプ

コメント 12

よくあるもんですねえ。こんな映像。少年マガジンやサンデーなんかの広告ページに必ずありましたね。このシーーモンキー。僕は買わなかったけれど、ミジンコみたいなヤツでした。
by Mineosaurus (2009-08-02 19:41) 

そう言えば・・・
小学校の頃
科学と学習って本があって、
科学のほうの付録に
これと似たような飼育セットがついてたな・・・

私らの時代になると、付録にまで落ちてたの？
by ばぁちゃん (2009-08-02 20:33) 

Mineosaurusさん、一時期は宣伝攻勢が凄かったですよね！
当時はぼんくらも欲しくて仕方なかったんですが、今思うと何で
欲しかったんですかね(^^;
by ぼんくらオヤジ (2009-08-02 21:35) 

ばぁちゃんさん、『学研の科学』の付録教材に
プランクトン飼育観察セットっていうのがあったんですが、
これとは違いますか？
by ぼんくらオヤジ (2009-08-02 21:44) 

すみません、
シーモンキー全く記憶にございません（汗）
うわ～学研の科学と学習、懐かしい～！
ちゃんと勉強、してなっかったんですね、
ワタシ…

by 牛子 (2009-08-02 22:14) 

これこれ牛子さん、何を反省してるんですか？(笑）
学研の学習と科学なんて、大人になって役に立ったのは
でんじろう先生ぐらいじゃないでしょうか(^^)
それはそれで凄いんですけど。
by ぼんくらオヤジ (2009-08-02 22:57) 

あぁ懐かしい・・・・
CM最後の粉から生まれるとシーモンキー♪のフレーズ。
記憶に残ってます。
あとはクラスで3人くらい買った話を聞いた記憶と
あっという間に全滅してケースだけになったものを見た記憶があります。
そんなに高価なものだったんですね～。
by みおのとおちゃん (2009-08-02 23:47) 

みおのとおちゃん、このＣＭご存知なんですねぇ(^^)
ぼんくらがシーモンキーを飼わなかったいちばんの理由は、
飼って成功した友達が一人もいなかったからです。
もし失敗したらかわいそうだと思うと、飼う気になれなく
なっちゃったんです。むしろ今になってチャレンジしてみたい
気持ちになってますねぇ♪　実は売ってるところがあるんです、
今でも（笑）　関心がある人のためにURLを載せます。
http://seamonkeys.cart.fc2.com/
当時最安のキットで600円ってことは、現在の貨幣価値に
換算して2400円前後。ってことは、このサイトの売価は
当時とほとんど変わってませんね♪♪♪
by ぼんくらオヤジ (2009-08-03 08:09) 

今見直しても、すごいカタチしてるな＾＾；
by 釣られクマ (2009-08-03 11:09) 

釣られクマさん、何ともいえない生物ですねぇ(^^;;;
それにしても、これのどこが「モンキー」なんですかね？
by ぼんくらオヤジ (2009-08-03 11:50) 

初めて見ました！
男子たちの中で流行っていたのかな？

by 空楽 (2009-08-03 13:25) 

そーなんですよ～
バカでしょー、男子って（笑）
…昔も今も（独り言）
by ぼんくらオヤジ (2009-08-03 17:44)