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ノストラダムスの大予言 [本]

ノストラダムスの大予言1.jpg 変なことを唐突に聞くけど、予言って信じる? 最近じゃジュセリーノやジョゼフ・マクモニーグルなんかが有名だけど、昭和の少年マンガ誌の巻頭カラーページをよく飾ったのは、アトランティス文明の存在を予言したエドガー・ケイシーと、16世紀フランスの大予言者ノストラダムスの2人だったよね。
 とくにノストラダムスの予言は社会現象と言っていいようなブームを巻き起こした。火付け役となったのは、反ユダヤ主義者で終末論者でもあった作家の五島勉が書き下ろした『ノストラダムスの大予言』(祥伝社)で、昭和48年(1973)の年末に発刊されて3ヶ月も経たないうちに100万部を売り上げちゃうという大ブームを巻き起こした。
ノストラダムス2.jpg 医者にして占星術師だったノストラダムスが1555年に著した『ミシェル・ノストラダムス師の予言集』の詩を生涯を交えて紹介しながら、五島独自の解釈を加えるという体裁だったけど、読んだ人は覚えてるかな。当たったとされる詩と史実を組み合わせて紹介しながら、当時の人々にとっての不安の的だった核兵器や環境汚染の問題を織り交ぜて、最終的には1999年の人類滅亡へと話を収斂させていく。カンタンにいってそんな本だった。
 昭和49年(1974)のノンフィクション部門ベストセラー第1位、総合部門でも五木寛之の『かもめのジョナサン』に次ぐ第2位となるほどのベストセラーになったんだけど、実はこの本、ノンフィクションとはおよそほど遠い内容だった。
 先ずもって五島には原資料を精査するための中世フランス語やラテン語の知識が無かったようで、彼が執筆するに当たって使用したのは邦訳乃至は英訳文献だったと思われるんだ。
五島勉.jpg まさかと思うかもしれないけど、五島はノストラダムスの本のタイトルからして誤訳しちゃってるしね。たとえば、本来なら「百詩篇」「百詩篇集」とでも訳さなければならない予言集の通称"Les Centuries"を五島は「諸世紀」としちゃってるんだけど、これは昭和36年(1961)に平田寛が"century"と勘違いして訳出した「諸世紀」を孫引したとしか言いようがない。後に五島は、
「そんなことは知っていたけど、世界がいつまでも続くようにという願いを込めて『諸世紀』という題名を“自分で”付けた」
 という反論をしてるんだけど、いかにも苦し紛れだよね(笑)。
 他にも、挙げると本が1冊できちゃうんじゃないかと思うぐらいにツッコミどころが満載で、次々に史実にはない人物や資料が登場してくるんだけど、これがなんでノンフィクション部門にノミネートされたのかねぇ^^; 小説として発表すればよかったのに。
 それでも本はガンガン売れるわ、マスコミは五島の著書に沿った内容の特番を組んで放送するわで、五島御謹製の誤ったノストラダムス像はその後の日本人の脳裏に刻み込まれちゃった観がある。
ノストラダムス1.jpg これだけならまだ笑って済ませる余地があるんだけど、後続のシリーズに至っては、中国人民解放軍がヨーロッパ侵略を行うことになるとか、ユダヤ人が世界を滅ぼすことになるとか、欧米文明が諸悪の根源であるとかいった極端な方向に走っていく。世論がそんな方向に付いていくはずもないんだけど、人類滅亡を何者か(彼の表現で言えば「別のもの」)が救うという思想は、ガンダムならまだしも、明らかに後のオウムを始めとするカルト教団に影響を与えていて看過できない。
 五島の荒唐無稽な「予言」と終末思想。なんでそんなバカバカしいものに大衆が迎合したのかと笑う平成人よ、それほどまでに核戦争や世界的な環境汚染の恐怖と現実に昭和の人々は曝されていたんだよ。



■ジューダス・プリースト「ノストラダムス」 2008年■

http://www.youtube.com/watch?v=n19nUjLDg9I&feature=related



■ヒストリー・チャンネル「ノストラダムス2012」より(英語)■

http://www.youtube.com/watch?v=p5cI7qUBo4s&feature=related
※続きはYouTubeでご覧になれます。



■TF1のミステリー番組「ノストラダムス」(フランス語)■

http://www.youtube.com/watch?v=Llny0WaOHeI
※続きはYouTubeでご覧になれます。


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絵本『ぐりとぐら』 [本]

ぐりとぐら1.jpg ぼんくら少年には2才下の妹と5才違いの弟がいた。なので長男長女の性というか、役目というのか、絵本の読み聞かせをせがまれる日々が何年となく続いた。絵本は様々だったけど、なんといっても福音館の『こどものとも』がダントツに多かったかな。
 こうして音読するハメになった絵本の中で特に強烈な印象で頭に焼き付いているのは『ぐりぐら』だ。自分自身が好きだったってこともあるけど、なんといっても弟妹が入れ替わり立ち替わり読み聞かせをねだってくる絵本だったからだ。何十回というレベルじゃない。少なくとも数百回は読まされてると思うよ^^; 
 双子の野ねずみ、青い帽子と青い服の『ぐり』と赤い帽子に赤い服の『ぐら』の絵本は、昭和38年(1963)12月、福音館『こどものとも』の93号として発表された。作者は中川李枝子(作)・山脇百合子(絵)姉妹。元気な保育園児のしげるが登場する童話『いやいやえん』の作者としても有名だね♪ 
ぐりとぐら2.jpg ふたりが得意なのは野菜作り。そして、ふたりが大好きなのは料理を作ることと食べること。記念すべき第一作目の『ぐりぐら』では早速、大きな卵で大きなカステラを作っちゃう。絵本で描かれた黄色くて大きなカステラのホントに美味しそうなことといったらなかった! 実はこの一作目、絵本が出る半年前に『たまご』ってタイトルで福音館の『母の友』誌に掲載されていたんだよね。その時の挿絵はモノクロだったんだけど、これを読んだお母さんもヨダレが出たのかな(笑)
 ぐりぐらはもちろんだけど、シリーズに登場する脇役たちも負けないぐらい魅力的だ。ぼんくら少年がイチオシだったのは手長うさぎの『くるりくら』。びよ~んと手の長いくるりくらの特技は肩車に木登り、そして雲を集めてボートを造り、空を漕ぎ回ること。うさぎといえば、慌てん坊のうさぎ『ギック』もいたね。
ぐりとぐら3.gif こうしたキャラクターの中には『すみれちゃん』のように、平成8年(1996)に脳腫瘍のために4才で夭折した福士すみれちゃんという実在の少女がモデルになっている場合もあるんだよ。すみれちゃんは、病気の進行で身体が食べ物を受け付けなくなってからも、ぐりぐらのつくったあの黄色いカステラやお弁当を見て、絵本の動物たちと一緒に食べる真似をしていたんだって。
 すみれちゃんの登場する『ぐりぐらとすみれちゃん』の制作にあたって作者の中川・山脇姉妹は、すみれちゃんのお母さんとの3年にわたる文通を経て絵本を完成させている。長く子供たちに愛される絵本とは、こうした真摯な姿勢と深い理解が醸成したものなんだなぁ。ボクらって、本当に素晴らしい創り手の作品に育ててもらってきたんだね。
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