セルロイドの臭い、覚えてる？ [テクノロジー]
ぼんくら少年は一度、火事を起こしかけたことがある。夏祭りで買ったアトムのお面に蚊取り線香の火が点いて燃え上がったのだ。特異な臭いに気付いた時にはお面から真っ黒なススを伴った赤黒い火が立ち上っていて、庭に出そうと慌てて持ち上げたら溶けた滴がポタポタと床に落ちて、そこからもゆらゆらと火が！ 半泣きで両親を呼びながら、どうにかお面は庭に捨てることができたけど、ハードワックスで手入れされた床に点いた火はジワジワと燃え広がっていた。直ぐに母が飛んできて、ソファのクッションで床の火を叩き消してくれたので最悪の事態は避けられたけど、我に返ってみれば腕や足にも溶けたものが張り付いてしまっていて、剥がすと皮膚が真っ赤にタダレていた。その時に負った火傷の跡は、40年以上経った今でも左足のくるぶしにケロイドとなって残っている。
問題のお面はセルロイド製だった。1970年代の始め頃まで、セルロイドはオモチャや文具、眼鏡など、あらゆるものに使われていた合成樹脂で、ニトロセルロースと樟脳などを混ぜて作ることの出来る人類最古の人工樹脂でもある。イギリス人のアレキサンダー・パークスによって安政３年(1856)に発明されたというんだから、確かに古いよね。
セルロイドという名称は明治３年(1870)にアメリカの製造会社が商標として登録したもので、正式には硝酸セルロースという。当初は何に使われていたか分かる？ 写真のフィルムだよ。それまではガラスに感光剤を塗った乾板が使われていたんだけど、セルロイドのおかげで軽くて場所を取らないフィルムが誕生し、後の写真と映画の飛躍的な発展に繋がっていくんだ。ちなみにアニメの「セル画」という用語は、セルロイド板にアニメを描いていた頃の名残なんだよ。
美しい発色性と加工がし易いことから、その後は万年筆や眼鏡や服のカラー(襟)、オモチャ等々、ありとあらゆる日用品に利用されていた。ただ、ぼんくら少年が身をもって経験したように極めて燃えやすく、アセテートやポリエチレンが登場すると、アッという間に身の回りから姿を消してしまった。現在ではピンポン球やペンのボディに細々と使われているだけだ。お面を付けた時に嗅いだあの独特の臭いは忘れてないけどね。
■今でもセルロイドの人形を作っている職人さんのお話■
ぼんくらオヤジ さん
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セルロイドのお面で大変な事故をされたんですね。
もちろんセルロイドのお面の臭いは今でもおぼえてますよ。でも何かの拍子にすぐ踏んづけて割っちゃうんですよね。
実家のアルバムには、鉄人２８号やオバＱのお面をかぶったファジー兄弟の写真が残っています。
筆箱や下敷き、石鹸箱、家庭科の裁縫箱もそうでしたね。特に使用頻度の高い筆箱は、少し無理なカタチで蓋を閉めたりするとたちまち角にヒビ入って割れるもんだからそこにセロハンテープを張って使ってました。またそこにゴミがつくから黒ずんで汚くなるので取れた部分を方眼紙で塞いでまたセロテープ張って使ってました(涙)・・・おおっ、どんなけ貧乏やったんや！
サンスターのアーム筆入れが登場してからは壊れないので結局小学校高学年から高校卒業まで使ってました・・・こういうのも捨てられないのですよ。
by ファジー (2009-10-28 16:29)
うわ〜ぁ、恐ろしい経験なさいましたね。
きっと我が家にもセルロイド玩具があったと思います。
昔は、安全の保証が余りありませんでしたね。
イタリアは子供の玩具にはとても厳しく、様々な厳しい検査が必要とされています。ただ、現在中国からの輸入ものが非常に多く、しかもどのような経由で輸入されているか知りませんが、違反している物が多く、この前も摘発されていました。made in Cinaは非常に問題があり、政府は頭を抱えてはいるものの、いたって輸入量は増加する一方です。
困ったもんですね。
by Milu (2009-10-28 19:50)
＠ファジーさんは子供の頃から物を大切に使ってらっしゃったんですねぇ、頭が下がります^^ そうでした、セルロイドの筆入れってカンタンにヒビが入りましたね！ そこをセロテープで補修したのも一緒です。でも、やがてセロテープの跡が汚くなったり、欠けちゃったりすると、もう新しい物に筆入れに買い換えてもらっていました。使える筆箱でも飽きると四の五のと屁理屈を言っちゃ、やっぱり買い換えてもらう。こんな恥ずかしい子供でした。こういうことは我が子のほうが余程しっかりしていると思います^^;
by ぼんくらオヤジ (2009-10-28 21:23)
たしか、、、ピンポン玉を工作に利用しようと、仏壇の線香の火を押し付けて穴を開けてみようとして、、、綺麗に開けられたけど、、、
あの、とんでもない臭いと音、忘れませんです！
ショワッ！！！とかいう音がするのよね、発火音。（流石、昭和に消えた品ですな）
by ujiny (2009-10-28 21:31)
セルロイドのお面、人形などもちろん記憶にはありますが、どちらかというと燃えやすくて危ないもの・・・というイメージです。
年代的にはいつくらいなのでしょうか。
私はソフビの方が身近な感じです。
by たろす (2009-10-28 21:39)
＠Miluさん、中国製品が厳しい規制にもかかわらずバンバン入ってくるということは、それだけ需要があるってことですよね。やっぱり安いからですか？ made in Chinaの話を耳にする度に、かつてのmade in Japanを思い出しますねぇ！ 今でこそ高品質で知られる日本製品ですが、かつては粗悪品の代名詞でした。もっとも問題とされている中国製品のように、コスト削減のために意図的に有害物質を使用したりすることはなかったと思います。公害にコピー商品の氾濫、知的所有権の乱用等々、かつての日本を見る思いで、なんとも感情を逆撫でされます（笑） 本当に困ったものですねぇ^^;
by ぼんくらオヤジ (2009-10-28 21:55)
＠ujinyさん、成分からすると、あの独特な臭いは樟脳のものですね♪ たしかに燃えたり溶けたりする時には何ともいえない不思議な音がします（笑） だからお面を捨てる時は、わざわざ細かくして火に放り込んでました^^;
by ぼんくらオヤジ (2009-10-28 22:00)
写真のロイド眼鏡、TRADです。
数年前から'60年代のようなセル・フレームの眼鏡、
サングラスが流行していますね。
by tateichi (2009-10-28 22:12)
＠たろすさん、恐らくポリ塩化ビニルも含む広義のプラスチック製品が日本で普及しだしたのは1960年代ですから、それから70年初頭に至る十数年の間にセルロイド製品は姿を消していったものと思われます。ぼんくらが小学校の低学年の頃は、まだ普通にセルロイド製品がありましたから、徐々に消えていったというよりは、70年前後に
急速にプラスチック製品と交代したんじゃないかなあと予想しています^^
by ぼんくらオヤジ (2009-10-28 22:12)
赤ん坊のころの写真に、動画で紹介されている起き上がり子法師が写ってたので持ってたんでしょうが、全然記憶にありません。
キューピーなんかは持ってた人も多いのじゃないでしょうか？
ソフビの時代になって、いつかコメントしたブルマークがウルトラマンや怪獣などを作ってましたね。
今ではこれらが人気で結構な値段で、取引されてるようです。
by ixion (2009-10-28 22:16)
＠tateichiさん、先だって予備の眼鏡を作りにちょっとオシャレな店に行ってきたんですが、昔懐かしいデザインのフレームが並んでいて、ついレトロ調のフレームで眼鏡を作っちゃいました^^; 髪をオールバックにして出来た眼鏡をかけたら、ぼんくらオバンに「ビル･エバンズみたい」と爆笑されちゃいました^^; それ以来、人前では使ってません（笑）
by ぼんくらオヤジ (2009-10-28 22:22)
＠ixionさん、写真には写ってるのに覚えのないオモチャってありますよね！ いつだったか、自分が赤ん坊の頃に遊んでいた遊具がお茶箱の中から出てきたことがあったんですが、まるで他人の持ち物を見てるような気分でした^^; ソフビの怪獣やヒーローは数万円から十数万の間で取引されているようですねぇ。悔しいなぁ、ぼんくらもいっぱい持ってたのに、ぜぇ～んぶ弟や男勝りの妹にやっちゃって、ひとつも手許に残っていません（泣） ixionさんは持ってませんか？
by ぼんくらオヤジ (2009-10-28 22:33)
危なかったですね
火事にならなくてよかったですね(Y ＾ ＾ Y)
もうすこしで
お面より高くつく所でしたね。。
by peace9314 (2009-10-28 22:38)
アニメの「セル画」がセルロイドから来てるとは思いませんでしたね。勉強になりました。
by 井上酒店 (2009-10-28 22:47)
＠peaceさん、ホントにそうですよねぇ^^; あれが昼間で両親がいなかったらどうなってたろうかと思うとゾッとします。唯一、収穫もありましたが。ぼんくらも弟妹も、そんなことがあって以降は、火を使う際には実に慎重になったんです（笑） 怪我の功名とはこのことですね♪
by ぼんくらオヤジ (2009-10-28 23:08)
＠井上酒店さん、もうひとつトリビアがあるんですが、セルロイド･ベースのフィルムを主力になって開発した会社がイーストマン・コダック社の母体になるんですよ^^ セルロイドのフィルムはやっぱり燃えやすく、扱いには何かと問題もありましたが、間違いなく２０世紀の文明と文化を支える基礎技術でした。
by ぼんくらオヤジ (2009-10-28 23:08)
恐ろしい経験で、ケロイドを体に残すと言えば、私も、セルロイドではありませんが
2度違うパターンで経験があります。いずれも傍にいた大人の不注意が、事を
大きくした結果ですが、１つは父親のアイロンの置き方不注意による腕のやけど
ともう一つは、幼稚園の先生の不注意による手の甲に出来たやけどです。
いずれも大きいケロイド痕が40年以上の今になってもしっかり残っています。
Made in Japan の品が高品質の品になったのは、ルーマニア系アメリカ人であるジュランらが、アメリカ本国では認められなかった品質管理理論を日本に持ち込み、広めてそのほかのアメリカ人や日本人と協力した結果だと聞いています。
そして中国製が高品質化していく今の状況は、日本人技術者がそれを中国人に教えて行った結果です。それを考えると「深い」と思えます。
by o_hiro (2009-10-28 23:12)
さぞ、こわかったことでしょう！
家が火事にならなくて何よりでしたね。
セルロイドのお面・・・弟はスーパージェッターを、私はウランちゃんを持っていたような記憶が・・・。（笑）
思わず「♪ アメリカ生まれのセルロイド～」と歌いながらコメントしています。（＾＾；
by びっけ (2009-10-28 23:26)
ぺりちゃんなのです。
今でもセルロイド製品を愛用しているよ。
意外や万年筆。
色合いとか微妙でいいんだよね。
これってフェチなのだろうか。
ではでは、
by ぺりちゃん。 (2009-10-28 23:26)
@o_hiroさん、我々の身体には傷跡という形でそれぞれの自分史が刻まれていますね^^
ジュランとはジョセフ・Ｍ・ジュラン博士のことですね^^ ＴＱＭ（総合的品質管理）の第一人者で、戦後日本にとっては最大級の恩人といっていい方です。博士の業績は一般の日本人にも、もっと知られていいんじゃないでしょうかねぇ♪ もしかするとこの辺は、このブログの常連コメンテーターでもある課長さんが日々、頭を悩ませている分野かもしれませんね。課長さん、もし読んでらっしゃったら一言、お願いします！
by ぼんくらオヤジ (2009-10-28 23:47)
＠びっけさん、さすがに目の付け所が違いますねぇ^^ セルロイドで野口雨情をイメージできる方はそうはいませんよ♪
青い目をしたお人形は
アメリカ生まれのセルロイド
日本の港へついたとき
いっぱい涙を浮かべてた
「私は言葉がわからない
迷子になったらなんとしよう」
やさしい日本の嬢ちやんよ
仲良く遊んでやつとくれ
大正時代のハイカラなムード溢れる作品ですね！
by ぼんくらオヤジ (2009-10-28 23:52)
＠ぺりちゃんさん、間違いなくフェチです（笑） セルロイドの発色って鮮やかなのに深みも感じさせるところがいいですよね。長時間触っているところは少しずつ変色して味が出てくるし。ぼんくらの父の遺品の中にもセルロイド筒の万年筆が何本もありました。商売道具だったからもしれませんが、きっと使い古しも捨てられなかったんだと思います^^
by ぼんくらオヤジ (2009-10-29 00:04)
危なかったですね。
セルロイド懐かしい響きです（*^_^*）
セルロイドっていえばアームふでいれを思い出しました(^_-)-☆
by ぺんちゃん (2009-10-29 11:28)
セルロイドの響きって子供に返るね～
キューピーも青い目の人形も覚えてるよ
懐かしいね夜宮での露天では必ず売ってたお面
私はそれらを見ながら一杯飲んでました
(￣。￣)ボ～～～～ッ爆笑
by みゆきママちゃん (2009-10-29 14:28)
＠ぺんちゃんさん、セルロイドって、なんか懐かしい響きがありますよね^^ ぼんくらは危ない思いはしましたが、セルロイドにとても郷愁を感じているんです。『20世紀少年』で、トモダチがお面をしてるシーンを観る度にセルロイドの臭いを思い出していました。そのうちアンティークのセルロイド人形を買おうかな♪
by ぼんくらオヤジ (2009-10-29 16:38)
＠みゆきママさん、夜店のお面を見ながら一杯ですか。うーん風情があっていいですねぇ…って、待て待て待て待て、それって幾つの時の話だ！？
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