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ナショナル『ハイパー乾電池』はこうして生まれた [テクノロジー]

ナショナルハイパー電池.jpg 少年時代から大変お世話になっているハイテク・ツールが電池だ。
「電池ってローテクじゃん」
 そう思ったら大間違いだ。電気自動車やハイブリッド車の命運がバッテリーにかかっていて、その開発に途方もない労力と技術力が要るのは今や広く知られているように、電池の開発能力は時代の技術力を反映するものなのだ。
 話は昭和25年(1950)に遡る。同年6月に勃発した朝鮮戦争は日本の産業界に未曽有の特需をもたらした。皮肉な言い方をすれば究極のアウトドアともいえる戦争は膨大な電池を必要としたため、既に業界の雄であった松下電器は、特に需要のあった乾電池の国内生産を昭和27年(1952)に決意する。単独生産の技術力を持たなかった松下は、現実的な方策としてアメリカの乾電池メーカーとの技術提携を模索したんだけど、そこは後発組の悲しさというか、高い特許料が壁になって交渉はほどなく行き詰ってしまった。
 これを見て、当時の専務で技術本部長だった現中尾哲二郎技術最高顧問は創業者の松下幸之助にこう進言する。
「そんな多額の金を払ってまで技術導入する必要はありません。第一、それだけの金をかければ、うちが独自に開発しても必ずいいものができます。ぜひやらせて下さい(注参照)」
 中尾氏の熱意を受け止めた創業者は、
「それだけ君が熱心に言うのであれば、ひとつ君がやってくれるか(注参照)」
 と、社運をかけた独自の技術開発を即断する。やっぱりスゴい人だね、松下幸之助って。
 この決定を受けて、松下は全社を挙げて乾電池の研究開発に取り組み、なんと翌々年の昭和29年(1954)には、アメリカを凌ぐ高性能の電池『ナショナル・ハイパー乾電池』の開発・生産に成功したのだった。松下幸之助は後にこう語っている。
「私をこの決断に踏み切らせたものは技術責任者の熱意であった。その結果、やはり熱意はものを生んだ。こうした成果は、単に相手に勝てばよいという気持ちから生まれたものではない。互いの切磋琢磨によって、少しでも良いものを社会に供給したいと願う技術陣みんなの熱意と真剣味が、このような成果を世に示したのだと思う(注参照)」
 ボクらがオモチャに入れて使っていた電池には、戦後日本の技術者と経営者の気骨と血の滲む努力が込められていたんだね。

注: 本稿の内容骨子と会話部分は、「パナソニックミュージアム松下幸之助歴史館メモリアルウィーク特別展プレイバック」中の『松下幸之助の志 ~Panasonic ideas for life の原点~』に依っています。


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ねこのこね

おもちゃがゼンマイやゴムから
電池が必要なものが増えたいったな〜。
もっともハイテクではなく発光するだけとか……
by ねこのこね (2009-09-21 16:49) 

斗夢

乾電池は完成されたかのように見えますが、今も研究されているんです。
松下幸之助は偉い。仕事は「私のため、あなたのため、社会のため」にするんですね。
by 斗夢 (2009-09-21 18:32) 

ファジー

「やってみなはれ」と言い放つ松下幸之助は偉かったね。
しかし昭和そのものであった「明る~いナショナル」がなくなったのはちょっと寂しいです。
by ファジー (2009-09-21 19:26) 

ぼんくらオヤジ

@ねこのこねさん、ある時期から急速にそうなっていったと思います。いつからだっただろう…思い出せませんが、大学時代になじみの駄菓子屋に行ったら、お菓子もオモチャも品数がぐっと減っていて衝撃を受けたのは覚えています。
by ぼんくらオヤジ (2009-09-21 22:47) 

ぼんくらオヤジ

@斗夢さん、乾電池は飛躍的とはいえませんが、じわじわと確実に進歩してますよね♪ SANYOのエネループやPanasonicのエボルタ等々、目が離せない商品がありますねぇ^^
by ぼんくらオヤジ (2009-09-21 22:52) 

ぼんくらオヤジ

@ファジーさん、松下という名前が昭和を支えた気概を、あるいはファジーさんの仰る通り昭和事態を体現していたのに多くの昭和生まれが気付いたのは、松下という名前が店頭から消え去ってからだったと思います。松下という日本の企業が消滅して、Panasonicという多国籍企業が残った、ある意味象徴的な出来事でしたね。
by ぼんくらオヤジ (2009-09-21 22:59) 

セッチー

ええ話ですなぁ。
技術者たちの熱意と創業者の決断力から生まれた電池は今やなくてはならない存在ですね。
小さい頃可愛がっていたワンちゃんの電動ぬいぐるみもこの電池に命を吹き込んでもらって元気に動いていたな。
今でも私たちにいっぱい夢を与えてくれる電池はすごい。
「明る~いなしょなぁ~る♪」が水戸黄門のオープニングから消えてしまってなんだかさみしいです。
by セッチー (2009-09-21 23:51) 

牛子

へぇ~何気なく普通に使ってる電池…ないと生活が不自由なものだらけですね。
私の父もナショナルが一番と思っていた人でして、ナショナル製品ばかり(^^;最後に買い残したパナソニックのTV3年で故障して3万円掛かったのには痛かったです(--;
で、ぼんくら牧師様ではなく、ぼんくら神父様なのね☆色々勉強になります(^^;
駄目オヤジナンバーワンおめでとうございます☆遅れてて申し訳ナイ!
by 牛子 (2009-09-22 02:33) 

ダー

やっぱナショナルですね♪

パナソニックってどうも安っぽい感が・・・r(^ω^*)))

by ダー (2009-09-22 09:07) 

ぼんくらオヤジ

@セッチーさん、変化の激しい経営環境でのトップの即断即決は、企業の存亡に関わる鍵とも言われていますが、その意味でも考え深いことですよね。しかも最近のワンマン経営とは全く意を異にしている点でも感慨深いものがあります。

一見、全く関係のない「オヤジ達の闘い」が子供たちの世界に濃い影を落としていたことがわかるエピソードではありますね。もちろんお茶の間にも(笑)
by ぼんくらオヤジ (2009-09-22 09:29) 

ぼんくらオヤジ

@牛子さん、もしかすると我々の生活の根幹を支えてくれるものは、あまり意識に上らないものが多いのかもしれませんね。普段、我々が空気を自覚しないのと同じで。

家電ってブランド志向が強いのかもしれませんね。ぼんくらは何でもありなのでピンときてなかったんですが。あと我々の両親の世代は、電化製品を量販店で買うのではなく、近所の電気屋さんで買うのが普通だったと思いますが、町の電気屋さんって、系列店だったじゃないですか。ナショナルのお店とかサンヨーのお店みたいに。だから買う店が決まっていると必然的に同じ会社の家電製品で統一されちゃったってこともあったかもしれませんね^^

牧師と神父の違いなんてキリスト教と関係なかったらピンとこないのは当然です。ただマスコミはせめてきっちり区別してもらいたいものですね。ニュースやドキュメンタリー、映画の字幕や吹き替えの台本等々、キリスト教圏の言語のエキスパートと自負する人たちがこうした知識を持っていないのには呆れちゃいます。ことのついでにもうひとつ説明しますと、プロテスタント教会を司牧する牧師は結婚することができますし女性でもなることができますが、ローマ・カトリックの司祭(神父)は妻帯が許されていませんし、女性はなることができません。つまり、ぼんくらは牧師にも神父にもなれないんです^^;
by ぼんくらオヤジ (2009-09-22 09:59) 

ぼんくらオヤジ

@ダーさんはナショナルのほうがパナソニックよりもお好きなんですね♪ ぼんくらもナショナル坊やのほうがパナ坊やよりもすわりがいいって思うからナショナル党かな(笑)
by ぼんくらオヤジ (2009-09-22 10:01) 

Q

ちょうどタイムリーに「パナ坊」が来年春に
引退するそうですね~。
次はどんなキャラクターを持ってくるのかしら~?
by Q (2009-09-22 11:33) 

ぼんくらオヤジ

@Qさん、もうパナ坊は引退ですか!?
名前はともかく、あのキャラとワンちゃん、気に入ってたのになぁ(T=T)
次のキャラも男の子なんですかね? 時代を反映するんなら
女の子でもユニセックス・キャラでもあり、って感じですが。
人間から離れる手もあるな(笑) いろいろ考えちゃいますね♪
by ぼんくらオヤジ (2009-09-22 12:20) 

みゆきママちゃん

生まれた時から電池しか知らない私←嘘つき
ゼンマイ仕掛けのオモチャはサルがシンバルを持ってチャンチャンしてたのがありました
後は鉄人28号のゼンマイで動くロボットもあった記憶が
私って何歳だ?爆
by みゆきママちゃん (2009-09-22 12:50) 

miopapa

実は、
この当時、私は旧松下電器に入社し手間がない頃で
最初に配属されたカラーTV事業部が
この乾電池事業部と隣通しで
何か、乾電池は凄いことになってるようだぞぉーーー
何ていってた頃で、
その後飛躍的に乾電池事業部がのびたんですよね!
それに、中尾哲二郎技術最高顧問に入社時の面接を
その後の新入社員研修等等では、裸でグランド走らされたり、かなり松下イズムをたたき込まれました・・・・・

by miopapa (2009-09-22 13:41) 

タラオのパパ

何か、乾電池の話を読んでて悲しい気持ちになった。
何で昔、アメ車顔負けのウインカーフラッシャー付の
自転車を売ってたんだろってね。

このウインカーを点滅するためにどれくらい乾電池を使ったんだろうか?
小遣いが足りなくて困ったものです。
電池の蓄電能力が低すぎだったよ。

今の充電池の時代だったら問題なく使えるのですが
そんな電飾系の自転車は、今見ないものねェ。
何で、当時、貯金はたいてまでして買ったのだろ?
流行って怖いものですよね。
by タラオのパパ (2009-09-22 15:56) 

空楽

いつもありがとうございます。
ポチ逃げすみません!
              空楽お父しゃん
by 空楽 (2009-09-22 16:00) 

ぼんくらオヤジ

@みゆきママさん、サルがシンバルもってチャンチャン鳴らすオモチャですよねぇ、懐かしいなぁ。たしか何回かシンバルを鳴らすとギイギイ声を出しませんでしたか、口を横に開いて(笑) 鉄人28号のゼンマイオモチャ覚えてますよ♪ 空を飛ぶポーズで地面を這いつくばって動くお間抜けなヤツですよね、ははは! あれを知ってるってことは、みゆきママさん、ぼんくらより年上?
by ぼんくらオヤジ (2009-09-22 16:01) 

ぼんくらオヤジ

@miopapaさんは松下で働いていらっしゃったことがあるんですね! 乾電池の開発中の貴重なお話、ありがとうございます。凄いなぁ、こんなお話はそう聴けるもんじゃないです。しかも今や伝説的な存在の中尾顧問に面接をお受けになったなんて、飛躍する松下の息吹を直に感じることができたわけですよね。松下イズムはどうなんでしょう、パナソニックにも受け継がれているんでしょうか。
by ぼんくらオヤジ (2009-09-22 16:08) 

ぼんくらオヤジ

@タラオのパパさん、スーパーカーのお話ですね。以前、このブログでも取り上げたことがあって、その時にも電池のことが話題になりましたよ♪ http://bonkura-oyaji.blog.so-net.ne.jp/2009-08-18 仰る通りで、大変な電池消耗で、ライトに憧れて買ってもらったのに、電池代が工面できずにタダのお飾りになったなんて可哀想なお話もあった由。ある意味、あらゆる手を使って消費を促した時代だったんでしょう。付き合わされるほうは、特に子供たちはワケも分からず振り回されたわけですよね。高い授業料を払ったもんです^^;
by ぼんくらオヤジ (2009-09-22 16:15) 

ぼんくらオヤジ

@空楽お父しゃん、いつも気を遣っていただいて恐縮です^^; お声をおかけいただけるだけでぼんくらはハッピーですよ♪ ありがとうございます!
by ぼんくらオヤジ (2009-09-22 16:17) 

miopapa

先程の書き込みに少し時代的ズレというか
【ぼんくらオヤジ】さんの書かれました
松下の初期の乾電池のことと
私が入社した当時、第二期の乾電池革命と言われる
取り組みがなされていて、中尾専務の件もあり
ついつい重なり、申し訳ありません!
出ないと、私の歳がとんでもなく増えそうで・・・
   それに、先程の書き込みに誤字も・・・
               お許しください!
by miopapa (2009-09-22 17:34) 

ぼんくらオヤジ

@miopapaさん、恐れ入ります。何となくモヤモヤとした違和感は感じていたんですが、深く考えませんでした(笑)。そうですよねぇ、早トチリしちゃってごめんなさい! 第二期というと、ネオハイトップの時期ですか、それともアルカリ乾電池の時期のことでしょうか? でもこうしてみると、ナショナルは幾度となく変革の荒波を乗り切ってきたことが分かって感慨深いですね^^
by ぼんくらオヤジ (2009-09-22 18:18) 

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