覚醒剤やめますか、それとも… [社会現象]
「覚醒剤やめますか、それとも人間やめますか」
有名な民放連の覚醒剤追放キャンペーンだ。当時、大学生だったぼんくらオヤジは、このCMを耳にする度に何ともいえない気持ちになった。福島に住んでいた頃の悲しい記憶が甦るのだ。
少年時代の2年余りを過ごしたのは東北でも有数の温泉町で、そこには歓楽地ならではの人々が集まってきた。彼らの子供たちも必然的にぼんくら少年と同じ小学校に通うことになるわけで、その中にMくんというヒョロっと背の高い色白の少年ががいた。普段は物静かで穏やかな少年だったけど、些細なことで手がつけられなくなるほど暴れ出したり、ネコを段ボール箱に入れてアパートの2階から落としたりする残酷な一面があった。
Mくんは、ぼんくら少年の住む家から歩いて数分のアパートに父親と二人で暮らしていた。お父さんは某有名暴力団の下っ端で、ほとんど放置されているといっていい毎日を送っていた。ぼんくら少年を預かってくれていた亡父の親友夫婦はMくんが不憫でならず、毎日のように夕食にMくんを招き、風呂に入れて帰していた。ぼんくら少年がMくんと兄弟のように親しくなったのはいうまでもなく。
ある日の深夜だった。玄関を激しく叩く音に家の者全員が飛び起きた。玄関には下着姿のMくんがいて、腫れ上がった唇から血が滲み出ていた。話によると、父親が部屋で暴れているという。突然、その辺のタンスやテレビに殴りかかり、どうしていいか分からずに立ちすくんでいたMくんも殴られたというのだ。じきにパトカーのサイレンが聞こえたので、ぼんくら少年の養い親のオジサンが様子を見に行き、アパートの住人による通報でMくんのお父さんが逮捕連行されたという報を聞いて帰ってきた。
それから半月ほどをぼんくら少年と共に過ごしたMくんは、岡山の親戚に引き取られていった。迷惑そうな表情をした親戚の小父さんの後を、大きなバッグを引きずるように付いていったMくんの姿は忘れることができない。
Mくんは、工業高校を出て小父さんの経営する自動車修理工場に就職し、現在ではJICAの職員として海外を飛び回っている。別れても手紙のやり取りを欠かさなかったぼんくらオヤジには、彼がその後に味わった苦労が手に取るように分かる。別居して数年後に彼の父親は数百万の借金を残して自殺し、本来なら返す義務のない借財を、息子は10年あまりをかけて完済した。それが父親への供養だと思ってのことだ。酒井法子の一件を知ったMくんは、数日前、ボリビアからこんなメールを送ってきた。
「たとえ旦那に勧められたとしても、のりピーには断る自由があったのだから自業自得だよ。だからといってシャブのせいで正常な判断ができなくなっちゃった人間に、反省や自力更生を求めるなんてお目出度い考えは周囲も捨てなきゃダメ。本人のためだというのなら、一時的には強制的に自由を奪って薬から抜け出す糸口を与えてあげないとね。そんな施設なり制度があったら、オヤジも死なずに済んだし、オレももう少し普通の人生を歩めたかもしれない」
自分だけではない。今や日本は、知らぬ間に我が子が、孫が、パートナーが薬物に汚染されるかもしれない恐ろしい国になってしまった。言うまでもないことだけど、覚醒剤は一回目に手をつけるかつけないかがその後の命運を分ける。のりピーの息子さんのように、第2、第3のMくんを出さないためにも、自分のためにも、薬物汚染と闘っていこう!
有名な民放連の覚醒剤追放キャンペーンだ。当時、大学生だったぼんくらオヤジは、このCMを耳にする度に何ともいえない気持ちになった。福島に住んでいた頃の悲しい記憶が甦るのだ。
少年時代の2年余りを過ごしたのは東北でも有数の温泉町で、そこには歓楽地ならではの人々が集まってきた。彼らの子供たちも必然的にぼんくら少年と同じ小学校に通うことになるわけで、その中にMくんというヒョロっと背の高い色白の少年ががいた。普段は物静かで穏やかな少年だったけど、些細なことで手がつけられなくなるほど暴れ出したり、ネコを段ボール箱に入れてアパートの2階から落としたりする残酷な一面があった。
Mくんは、ぼんくら少年の住む家から歩いて数分のアパートに父親と二人で暮らしていた。お父さんは某有名暴力団の下っ端で、ほとんど放置されているといっていい毎日を送っていた。ぼんくら少年を預かってくれていた亡父の親友夫婦はMくんが不憫でならず、毎日のように夕食にMくんを招き、風呂に入れて帰していた。ぼんくら少年がMくんと兄弟のように親しくなったのはいうまでもなく。
ある日の深夜だった。玄関を激しく叩く音に家の者全員が飛び起きた。玄関には下着姿のMくんがいて、腫れ上がった唇から血が滲み出ていた。話によると、父親が部屋で暴れているという。突然、その辺のタンスやテレビに殴りかかり、どうしていいか分からずに立ちすくんでいたMくんも殴られたというのだ。じきにパトカーのサイレンが聞こえたので、ぼんくら少年の養い親のオジサンが様子を見に行き、アパートの住人による通報でMくんのお父さんが逮捕連行されたという報を聞いて帰ってきた。
それから半月ほどをぼんくら少年と共に過ごしたMくんは、岡山の親戚に引き取られていった。迷惑そうな表情をした親戚の小父さんの後を、大きなバッグを引きずるように付いていったMくんの姿は忘れることができない。
Mくんは、工業高校を出て小父さんの経営する自動車修理工場に就職し、現在ではJICAの職員として海外を飛び回っている。別れても手紙のやり取りを欠かさなかったぼんくらオヤジには、彼がその後に味わった苦労が手に取るように分かる。別居して数年後に彼の父親は数百万の借金を残して自殺し、本来なら返す義務のない借財を、息子は10年あまりをかけて完済した。それが父親への供養だと思ってのことだ。酒井法子の一件を知ったMくんは、数日前、ボリビアからこんなメールを送ってきた。
「たとえ旦那に勧められたとしても、のりピーには断る自由があったのだから自業自得だよ。だからといってシャブのせいで正常な判断ができなくなっちゃった人間に、反省や自力更生を求めるなんてお目出度い考えは周囲も捨てなきゃダメ。本人のためだというのなら、一時的には強制的に自由を奪って薬から抜け出す糸口を与えてあげないとね。そんな施設なり制度があったら、オヤジも死なずに済んだし、オレももう少し普通の人生を歩めたかもしれない」
自分だけではない。今や日本は、知らぬ間に我が子が、孫が、パートナーが薬物に汚染されるかもしれない恐ろしい国になってしまった。言うまでもないことだけど、覚醒剤は一回目に手をつけるかつけないかがその後の命運を分ける。のりピーの息子さんのように、第2、第3のMくんを出さないためにも、自分のためにも、薬物汚染と闘っていこう!
■民放連 「覚醒剤やめますか、それとも人間やめますか」 1980年代(?)■
■政府広報 「覚醒剤の恐怖」 1980年代(?)■
■覚醒剤音頭 忌野清志郎■
学校に入るために家を出るとき、
「薬には手を出すな、山には行くな」と何度もくり返していた母親を思い出しました。
by 斗夢 (2009-08-29 18:41)
斗夢さん、お母様の愛情が込められた言葉で、胸が詰まります。
光があれば影があることを知り尽くした方だけができる助言でしたね。
by ぼんくらオヤジ (2009-08-29 18:49)
最近の麻薬の蔓延は、どうしたものでしょうか。
芸能人のみならず大学生にも広がっているのは気になって仕方ありません。
ノンベなオヤジですが、子供に対しては親バカといわれようとも出来る限りの自己防衛はとりたいと思っています。
ついつい、アヘン戦争の清国を脳裏に浮かべてしまいますが、我が子の行く末、強いては日本の将来がとても心配です。
by ファジー (2009-08-29 19:43)
ぼんくらオヤジ殿、ぺりちゃんなのです。
良識のある人なら気付くものでしょうね。
煙草がいい例でしょう。お酒もね。
煙草が止めららない人に麻薬は無理でしょう。
全ては自己責任って考えか方かしら僕の場合。
ただ麻薬って第三者に多分に迷惑をかけちゃう。
まぁ今点が大問題。
戦後間もない頃までは公認だったようなヒロポン。
これも覚せい剤一種。
時代が変われば価値観も違ってくるけど。
自己破壊的な所作は如何なものか。
真面目な文章は僕には似合わないかしら・・・
by ぺりちゃん (2009-08-29 20:31)
こんばんは、
何かとても胸が痛むお話です(--;
ぼんくら様深い人生を送っていらっしゃるのですね。
自ら身を滅ぼすのは自分の選択肢と言えばそれまでですが、選ぶ事も出来ず、それに巻き込まれる方はたまったものじゃございません。一番の犠牲はお子さんですよね。
若い頃、薄野では幾人か私もその実態を知る事がありまして…ただ無責任に横目で見ながら通り過ぎたという感じですが…
例え短い間とは言え、ぼんくら様と過ごされた期間はMくんにとって貴重なものであったと思います。
by 牛子 (2009-08-29 21:20)
ファジーさん、ぼんくらも全く同じ心配をしています。
ドラッグが国家の根幹を揺るがしかねない存在なのだという
自覚が元々この国には希薄なような気がします。
何故、麻薬や覚醒剤の使用が国によっては死刑や終身刑に
なるのかを考える必要はせめてあると思います。
by ぼんくらオヤジ (2009-08-29 23:49)
ぺりちゃんさん、真面目な文章、お似合いですよ(笑)
仰る通りで、自己責任のレベルをいともあっさり超えちゃうのが
麻薬や覚醒剤の怖いところですね。被害者と加害者を生む
上に、一度回転しだした闇の資金は恐ろしい勢いで膨らみ、
一層のドラッグの流入をもたらすという負のスパイラルをも
呼び込んでしまいます。取り返しのつかなくなる前に、
こうした動きには社会が強い意志で当たっていかなければ
ならないと思います。
by ぼんくらオヤジ (2009-08-29 23:59)
牛子さん、ぼんくらは本当に素晴らしい友人知人に恵まれたことが
唯一の財産だと思っています。気付いてみれば、しゃにむに自分で
得たものはガラクタばっかりで、大切なものは皆、与えてもらったもの
でした。Mにも与えてもらいっぱなしでこの歳になっちゃって(笑)
Mの凄いところは、あれだけ大変な思いをしていながら、父親の
悪口をぼんくらにも言わなかったことです。一度、彼の苦労を知った
つもりでいろいろ言ったら、
「お前は何も分かっちゃいないんだよ! 自分が不幸だ、被害者だと
思った途端に負けなんだ。友達なら、そんな目でオレを見るな!」
と叱られました。本当の修羅場を乗り越えた人間は凛としていますね。
by ぼんくらオヤジ (2009-08-30 00:33)
深いです。そして、とてもいい記事だと思います。
読ませていただいて有難うございました!
Mさんのとても前向きな生き方に、感動。
「もう少しましな人生」という言葉に、強さを感じました。
もう少し…なんて生易しい苦労ではなかっただろうに。
今覚せい剤は若者を中心に出回ってますね。
いくつも名前を変えて、違法性を隠し、
ただ「キモチよくなれるクスリ」と。
背伸びしたい年頃の子供たちはすぐに騙されるでしょう。
私たち大人はこういう情報を必死で隠すのではなく、
むしろたくさんの情報を子供たちに与えて、
怖さを教えるべきだと思いました。
by りょお (2009-08-30 06:19)
先日、麻薬コンビニの人が逮捕されたニュースがやってました。
24時間365日注文受付という営業方法だったらしいのですが、注文が殺到し、寝る間もなかったそうで、逮捕されたときに「クタクタだった」と言ったとか。。。
逮捕された人間も、まさかこれほど売れるものとは思ってなかったようで、今の日本の薬物蔓延のレベルが相当なところまで来てるのがわかりますね。。。
by たかぽん (2009-08-30 09:09)
りょおさん、お互いに子供たちがいるので、のりピーの件を始めとする
一連の覚醒剤報道は、とても他人事じゃないですよねぇ^^;
価値観の多様化の中で育った親と子供。ついつい芯を見失いがち
ですが、「ならぬことはなりませぬ」という強い意志を親が身をもって
示さなければならない時に来ているのかもしれませんね。
by ぼんくらオヤジ (2009-08-30 10:10)
たかぽんさん、恐ろしい話ですね! 背筋が寒くなります。
ネットでは、現在進行形で覚醒剤を服用している人達の
話に触れることができますが、ほとんどは軽い気持ちで、
しかも幻覚症状や常習性が当初は感じられない人が多く、
「なんだ、こんな程度か」
という安心感を覚えているようです。実はこれがトラップなんですが、
その頃には、本人に正常な判断力が失われ始めていて理性で
誘惑に抵抗するのが困難になる。一時期止められても、またすぐに
止められるからと安易に再使用してしまう。怖いですねぇ、
ぼんくらは
何が怖いかというと、自分が生きながらにして死んでいくことが怖くて
たまりません。生物学的に生きていたとしても、自分が自分でなくなって
いくのですから、これが死でなくてなんでしょう。絶対に手を出しちゃダメ!
by ぼんくらオヤジ (2009-08-30 10:51)